歯科分野における難治性疼痛

■非歯原性疼痛とは

歯科における疼痛(痛み)は、虫歯(ウ蝕)、歯内病変(根っこの病気)、歯周病に起因する歯原生疼痛と歯が原因でない非歯原性疼痛に分けられます。

非歯原生疼痛はこれらの原因と考えられる歯を抜歯しても痛みが消えません。顎関節痛、頭痛、三叉神経痛に関与する痛みであったり、虚血性心疾患の関連痛、筋筋膜症候群(筋肉の凝りが原因で歯痛の原因となる)が疑われる場合、口腔顔面痛専門医に依頼することが第一選択になります。 ⇒口腔顔面痛学会

■歯原生の難治性疼痛(歯が原因の痛み)・・・・・難治性根尖性歯周炎

1)難治性根尖性歯周炎

難治性根尖性歯周炎とは通常の根管治療では治癒に至らず、根管壁(根っこの先端や側面)にヒビや穿孔(穴)、破折、根尖孔周囲に細菌感染(バイオフィルム)が生じているため、感染源が除去できず痛みが生じると考えられます。これらの診断治療にはマイクロスコープを使い、クリニカルパスを含めた治療で改善を期します。すなわち、根管内の細菌の超音波洗浄による除去、クラック・穿孔の充填を行います。

2)残髄が原因(歯に神経の取りこぼしが残っている)

虫歯が神経に達した場合、この感染した神経を除去(抜髄)します。しかしながら、根管治療における根の先端まで拡大形成、清掃ができていなく残髄があって、たび重なる根管治療、薬剤の刺激、咬合や歯ぎしり等の疼痛刺激が加わり、難治性歯原生疼痛となります。歯原生であることが確認されれば、通法に従ってラバーダム防湿下で電気的根管長測定を行い、インスツルメントで残髄部を除去し、確実な作業長を設定後、根管拡大形成と緊密な根管充填が必要です。

3)根尖孔周囲が原因

感染根管治療を行っていて疼痛が生じ、この原因が明らかとならないまま、根管治療が長期経過、慢性化したこの病態はより複雑化し難治性疼痛、難治性根尖性歯周炎と診断されています。転医、または中断により再根管治療がなされ、長引く根管治療のため、根尖孔が大きく拡大され、さらに根管の再感染のため、根尖周囲組織からの浸出液、排膿、感染した肉芽がマイクロスコープで観察されます。そのため感染した肉芽が大きく拡大した根尖孔から根管内に入り込み、通常の根管治療を行うと肉芽とインスツルメントなどとの接触により激しい疼痛が生じます。この感染した肉芽は根管内をマイクロスコープで観察し、レーザーを用いて肉芽を蒸散し、根管を再清掃、作業長を設定しなおし根管内の無菌化の確認後、緊密な根管充填を行うことにより改善します。