歯周病の診断基準とは?

●なぜ歯周病は診断が大事なのか?

病気は、「診断」がついて初めて治療が始まります。歯周病を含めすべての病気の治療は正確な診断が重要です。いい加減な診断では、歯周病の全体像がつかめないので、不正確な治療計画を立案することになってしまいます。そうすると治療はうまくいきませんし、患者さんにとっても医療者にとっても時間の無駄になってしまいます。今回は、歯周病の診断についてお話しましょう。患者さんにわかりやすいように解説しています。

1)プラーク性歯肉炎・歯周炎の診断とはどうする?
●start→アタッチメントロス(歯槽骨の吸収)→なしの場合

歯肉の炎症・・・なし

→→ 健全・正常(4mm未満の歯肉ポケット)です。

●start→アタッチメントロス(歯槽骨の吸収)→ありの場合

組織破壊の程度による分類(骨がどれだけ溶けてるか)
歯槽骨の吸収・・・30%未満→軽度歯周炎
30~50%→中等度歯周炎
51%以上→重度歯周炎

炎症の程度による分類(歯肉がどれだけ腫れてるか)
歯周ポケットの深さ・・・4mm未満→軽度歯周炎
4~6mm未満→中等度歯周炎
6mm以上→重度歯周炎

はじめに、歯周病の原因が、①細菌性プラークによるものか(不潔な口腔内)、②外傷性咬合によるものか(歯列不正や歯ぎしりによる)、③全身性因子によるものか(糖尿病、妊娠、高血圧、免疫力低下を伴う病気)、④生活習慣の影響によるものか(喫煙、過度の飲酒、糖質の過剰摂取、睡眠不足など)、を大まかに把握します。次に上図に従い、1歯ごとにプラーク性歯肉炎、歯周炎を診断します。1歯単位の診断をふまえ、患者個人レベルで、プラーク性歯肉炎患者か歯周炎患者かを決定します。歯周炎患者であれば、緩慢な進行の慢性歯周炎患者か、急速な進行の侵襲性歯周炎患者か、遺伝疾患に伴う歯周炎患者かを診断します。さらに、限局型か広汎型か。軽度・中度・重度かの進行度を決定します。

(1)1歯単位の診断
a.組織破壊の程度による歯周炎の分類
・歯槽骨吸収程度(Bone Level)あるいはアタッチメントロス(Attachment Loss)が歯根長の1/3以下(約30%未満)、根分岐部病変のないものが軽度歯周炎です。
・歯槽骨吸収度あるいはアタッチメントロスが歯根長の1/3~1/2以下(約30~50%)、根分岐部病変があるものが中等度歯周炎である。
・歯槽骨吸収度あるいはアタッチメントロスが歯根長の1/2以上(約51%以上)、根分岐部病変が2度以上のものが重度歯周炎である。

b.炎症の程度による歯周炎の分類
・歯周ポケットの深さが4mm未満は軽度歯周炎である。
・歯周ポケットの深さが4~6mm未満は中等度歯周炎である。
・歯周ポケットの深さが6mm以上は重度歯周炎である。

(2)個人レベルの診断
a.病型診断
・プラーク性歯肉炎罹患歯と歯周炎罹患歯が混在する場合は、歯周炎を病名とします。
・全身性疾患、家族内発症および喫煙、ストレスなどの有無を確認し、歯周病への影響の有無を確認する。
・年齢に比較して歯周組織の破壊速度が緩慢である場合を慢性歯周炎患者、年齢に比較して歯周組織の破壊が急速である場合を侵襲性歯周炎患者とします。

b.歯周炎の進行度
・軽度、中等度、重度が混在する場合は、最も重症な歯を基準として病名を記載します。「全体的に中等度、部分的に重度」のように記載する場合もあります。
・慢性歯周炎では1歯単位の診断で、中等度と重度歯周炎の罹患歯数が全部位の30%以下であれば限局型、30%を超えれば広汎型として分類します。一方、AAPのconsensus Reportでは、第一大臼歯または切歯の2歯以上にアタッチメントロス(そのうち1歯は第一大臼歯)があれば限局型、第一大臼歯と切歯以外の少なくとも3歯以上にアタッチメントロスがあれば限局型広汎型に分類することが示されており、両者を勘案して分類することが必要です。

c.口腔全体の歯周炎の重症度
患者個人レベルで歯周炎の重症度を診断する場合は、1口腔単位での診断となるため、1歯単位の進行度と罹患歯数の両方を以って診断します。

2)咬合性外傷の診断とはどうする?
咬合性外傷は咬合力により生じる歯周組織(セメント質、歯根膜、歯槽骨)の傷害であり、健全な歯周組織に過度な咬合力が加わり生じる一次性咬合性外傷と、歯周炎による組織破壊の結果、支持歯槽骨が減少して生じる二次性咬合性外傷に分けられます。咬合性外傷は、1歯単位の診断名です。
咬合性外傷が認められる歯において動揺度が1度以上あり、かつエックス線所見で歯根膜腔の拡大、骨吸収が認められる歯については、咬合性外傷と診断します。その他の所見としては、①過度の咬耗、②歯の病的移動、③歯の破折、④エックス線所見での歯槽硬線の消失、⑤エックス線所見での歯根吸収、などを伴うことがあります。

以上を以って、歯周病を診断し、治療計画を立てて治療を進めていきます。歯周病の治療は、期間がかかります。治療期間中にも口腔内の状態は刻々と変化します。なので、その都度、再診断して変化を見極めることがとても大切なのです。